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幕があがる


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「この世の謎が、すっかり解ける夢を見た。」
帯に大きく書かれた言葉
これに惹かれて買ったわけではなかったとおもう
古本屋さんで見つけたのは、たぶん10年くらい前


今日は一日雨が降っていた
雨の日に似合うもの…
朝は、ゆっくりミルクを温めてロイヤルミルクティーなんて作ってみた
昨日焼いたスコーンを食べよう
余った生クリームを泡立てて、ホイップバターを作る
ふわりとした白いものをのせて、ハチミツもかけたりして
いやぁ、ご馳走だなぁ

雨の音をききながら
「雨の日はゴーサイン」という言葉が浮かぶ
いつからか感じていること
そう、雨の日に出かけると
いつもいい出逢いがあったから


鞄に本をしのばせて出かけた
いくつかの場所へ向かう途中に本をひらく
今日、そばにある 言葉のかけら
雨の街をゆっくり歩いた


18時を過ぎて辿り着いたのは、友人が働く珈琲屋さん
初めて訪ねたそのお店に窓はなくて(あるけど、柔らかな白い布で覆われている)
ささやかにそっとある扉
中の様子は見えないけれど
開かれるのを待ってくれているように感じる
わくわくする
傘をたたんで、扉を開けた

――茶色の世界にあるもの
珈琲の匂い
きこえるピアノ
静かな話し声
大事に使われている食器棚と机
やわらかな灯り
磨かれた透明のグラス
一輪の紅い花

珈琲とチョコレートをそばに
本の続きを読む
だんだんに夢中になるその内容はお芝居のこと
消えてしまうその一瞬に全力で向かうひとの言葉
珈琲をひとくち
チョコレートをひとくち
見える場所から消えていく
わくわくするのは
それが身体に入ってくるということ
ひとくち、ふたくち といただくたびに
身体は温まってゆくように感じた
ゆっくり過ごす時間のなかで
本を閉じて、時折店の中を眺めた
お客さんは絶えないけれど
穏やかな静けさは続いていて
ピアノの音に、珈琲をたてる音が重なる
いい音
水の音

懐かしい場所を思い出した
実家のそばの白い家
暮らしの雑貨が並ぶ店
10代のわたしは憧れの気持ちで訪れる
夜の灯りは温かくて
振り子時計の音がした
小さな買い物をする時間に
いつかの暮らしを大切に浮かべた

いまもそのお店はあるのだけれど
あの頃とは印象がすこし違っていて
お店も変わったのかもしれないけれど
わたしが変わったのでしょう
20年が経ちますからね
変わるもの 変わらないもの
思い出すこと

今日訪ねた茶色の世界は
10代の頃通ったあのお店
そこで出逢った匂いと気配
すっかり満たされて
開いた扉をそっと閉じる


帰宅して本を眺める
いつ出来た本なのかな
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1996年2月20日 発行

同じ月日が流れていた
















by shokanshu | 2019-03-03 23:35