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だれかと一緒に何かする

寝ころがって歌を歌った

あなたとふたりで来た丘は 港が見える丘
色褪せた桜ただひとつ 寂しく咲いていた
船の汽笛 むせび泣けば
ちらりほらりと 花びら
あなたとわたしに降りかかる
春の午後でした



(港の見える丘)


やさしくて、すこし淋しい
好きな曲はそういうのが多い
ひとりで歌うと、うっかり、ひどく寂しく響くときがある
冷やりとするくらい

身近にピアノ弾きさんがいて
ときどき、伴奏をお願いして歌わせていただくと
寂しさはなんだかキラキラと軽やかに舞った
優しさが加わる感じがしたのは
ピアノ弾きさんが声を聴いてくれているから
合わせようとこちらを見てくれている
その優しさなんだと思う
だれかと一緒に何かをするのは
優しい心を育むかな
喧嘩もあるかもしれないけれど
自分では気づけない景色を見つけることもあるだろうな

絵のこと
絵を描くのは小さい頃から好きで
だけどしばらく描かない、描けなくなったこともあって
また始められたのはお芝居がきっかけ
舞台美術のスタッフとして劇団に参加して
ぶつかり合いに刺激をいただいた
そうして
人物、顔を描き始めた

展覧会が続く
一月、二月、三月
会場はお店
お店には店主さんがいて、お客さんがいて
お店に流れてきた時間が生き物としてそこにある
わたしの描いた絵は飾られて
どんなやりとりをするだろう
一緒に何ができるかな

































# by shokanshu | 2021-12-27 16:45

クリスマス

街はうきうきと
すれ違う人人の手には紙袋
誰かへの贈り物かな、贈られたのかな
クリスマスといって、何か張り切ってすることはないけれど
ケーキを食べて、散歩に出かけた

せっかくなので、すこし綺麗な格好をしてみようかと…
気に入っているニットのワンピース
羽織るコートは古着屋さんで買った、昔から着てるもの
お金はかけていないけれど
ポケットに穴は空いていないし、靴も磨いた
特別なことといえば、小さな鞄を選んだこと
いつもやたら抱えてしまうのだけれど、よしてみた
ほんと、小さいので何も入らない
長財布は無理なので、小銭入れのようなタイプにすこしの額を用意して
電話は一つ、着信機能のないほうを選び(もともと、頻繁に鳴る電話じゃないけれど)
一応、リップクリームとか
それから
いつものノートとペン、これは必須
ハンカチとアルコールスプレーはコートのポケット
さぁ出かけよう
荷物が少ないって素晴らしいな
しばらく行けていないけれど、旅行へ行くと感じること
鞄ひとつで足りてしまうんだなぁ
なければないで、なんとかなるもので
どうしていつも抱えてしまうんだろう

本もないので、道中はノートを開いた
自分の文字が書かれたノート
誰かに見せる予定のない、素直なことば
(それでも、選んでいる気がするな)
移動する時間に、忘れたくないことのメモと考えごとのメモをした
道のさきで会いたいひとに会い、声をきき
思いがけず会えたひとに会い、手を振り
人の声が音楽に乗って、トランペットの高音が耳に残った

散歩を続ける
小さなギャラリーで作品と向き合う
ゆっくりと時間をかけてそこに居ると
大事に置かれた作品のある世界
それをつくった作家の場面が浮かんで
「軽くて、重くて、透明」
そんな言葉が浮かんだ

もう一つ、べつの展覧会へ
洋菓子店の二階には可愛らしい空間が広がり
わぁ、こんな所に住みたいと思った
こちらにも大事に作品が飾られ
展示された小さな三角形のショップカードに惹かれた
そうだ、来月の展覧会の会場は三角形
わたしも大事に飾りたいな、そんなことを思う
階段を降りて
一階のお店でサブレとシンプルなケーキを買った
初めてのお店なのでお味見で少しの買い物
(きっと美味しい、また来る気がする)
可愛らしい包みに入れていただき
もちろん鞄には入らないのでお店の紙袋を買った
その紙袋もいい
(帰宅して調べたら好きな画家さんによるものだった)
帰路、わたしも手に紙袋を持つ姿となって
それですれ違う人人の紙袋を持つ姿に気がついた
みんな何が入っているんだろう、ちょっとわくわくした

紙を買いに行く
家の近くのギャラリーへ
蚤の市をやっていて、出品された手漉き和紙
この間お試しにすこし買ってみて、気に入った
厚めで、しばらく描いても耐えてくれそう
手触りが素朴、あったかいのでほっとする
聞くと牛乳パックが原料で、そこに少し別の紙も入っているのでほんのりベージュ色
膝の上に乗せて描いていると着ているワンピースと同じ色だと気がついた
紙と自分が一緒になるようで面白いや

紙を抱えて外に出る
小さいのと大きいのを買った
もちろん鞄には入らない
小さいのはケーキ屋さんの紙袋へ
大きいのは丸めて輪ゴムでとめてもらって、それでも両手を広げたサイズ
家まで近いし、むき出しのまま抱える

家へ向かう途中、珈琲屋さんが開いていて一休み
やっと一休みだ
マンデリンを頼んで
買ってきたばかりの紙に早速ペンを走らせる
何気ない会話をして和んだ

うきうきとして、家まで駆けた










# by shokanshu | 2021-12-26 05:25

妄想家


部屋の間取りを見るのが子どもの頃から好きだった
母が趣味でかいていたんじゃなかったっけ
建築の仕事に憧れていたと聞いたことがある

物件探しをしている
未来に開くお店のこと
すぐにぽん!と飛び込める状況ではないので
今は妄想家となって
いろんな間取りを見ながら夢をみている

しかし、見つけてしまった
理想的な物件を
この間取りを見ていると
かなり具体的な色々が次々浮かぶ
どうする?飛び込んじゃう?そんな気持ちになるけれど
おそらく、たった今には叶わないというのは冷静なわたしが理解している
だけれども
現実にこんな理想的な物件があることを知れたことがやった!という感じで
雲をつかむような、霧を進むような
そんな状態から脱けられるときがきたような気がした
すこし前から店の名前がぼんやり浮かんでいて
やりたいこと、必要なものが具体的になってきていた
そこに現れた理想的な物件
妄想を現実に変えてゆこう
この世の中と付き合っていく


喫茶[ ε ]を閉店してもうすぐ二年
この間わたしはどう過ごしてきたか
喪失を味わって
自分を癒すために描き始めた水彩画は「銀河」
銀河の真ん中には喫茶[ ε ]がある



















# by shokanshu | 2021-12-22 20:56

時計の針

電池切れで止まっていた掛け時計
コチコチと音は微かに、針は6時40分で止まったままで
何日もそのままにしていた
時間を気にしないで過ごしてみたかった

出勤前に一仕事しようと部屋へ
遅刻するわけにはいかないから、時間を気にしなくては
ようやく掛け時計を再開することにした
引き出しに単3電池を見つけてセットすると
コチコチと聞こえていた音が太くなったよう
しっかりと刻む意思を感じる
秒針のない時計なので、一見止まっているかのようだけれど
ゆっくりと回る中央の丸い部品に一点印がついていて、それが秒針の役割をしている
時が刻まれる

今朝は雨
雨の音もして




















# by shokanshu | 2021-12-17 07:15

ごはん


手紙が届いて
返事をかいて
お腹が空いてご飯を作った

ご飯を作ろうと台所へ行ったのではなくて
ちょっとビールを飲んでみるかと思ったんだ
ソーセージをつまんで
ポテトチップスをつまんで
椅子はあるけれど座らない
立ち呑み屋さんの気分

冷蔵庫に野菜が色々あるのを知っていた
先日、母が送ってくれたもの
「そっちにも売っているとは思うんだけど…」と言いながら箱いっぱいに野菜が入って届いた
そのきっかけは親戚が作った白菜
農家ではなくて、ライフワークなのかな、作っている伯父がいる
今回はまるまると美しい白菜だった
抱えると、なんだか赤ちゃんを抱いているみたい
ちょうどそんな大きさ、重さで
ちょっと、あやしてしまいそうだった
お芝居の一場面にあるかもしれない

まるまる白菜を送ってくれるついでに
大根、南瓜、葱、トマト…色々野菜がやってきた
お味噌汁くらい、作ってみるか と始まって
気づけばご飯も炊いているし、南瓜も煮ていた
ビールをくいくい飲みながら

もともとあった椎茸と茄子をグリルへ
生姜をすりおろして醤油をかけて簡単おつまみ
そんなことをしていたら
むかしアルバイトしていた飲み屋さんを思い出して
今はもうない地下の店
90歳近いママが、茄子を網で焼いていた姿を思い出した
お客様へのお通し作り、すりおろした生姜をのせて
わたしはカウンターの中でいつも緊張していたのだけれど
週に一度通うその時間が好きだった
ぼんやり思い出す景色に触れないのは不思議なことだと思う


さて
いま台所からはクツクツと音がする
何かを煮込んでいるのではなくて、ネルの煮沸
こっくりした深焙り珈琲を点てようと思う
夜更けの珈琲
手紙の返事

続きをかく


















# by shokanshu | 2021-12-16 22:29